測定の核心は一枚の地図です
同じ会社、同じ一行の問い。役員は4.3点、作業者は2.1点をつけました。平均だけ見れば「ふつう」と閉じられていた二つの点数が、どのように会社を読む一枚の地図の上で二つの点として生き残るか。OpenKnock Culture Ladder の核心設計の場。
同じ会社、同じ一行の問い。「私たちの会社は、ミスをしても安心して言える」。 役員の平均は4.3点でした。作業者の平均は2.1点。 報告書の一行に二つの点数を一緒に置いて会議室に入ったとき、 皆が一度ずつ同じ表情をしました。
平均をとれば3.2点。報告書は「ふつうです」と一行で閉じます。 ですが同じ会社の中で二人の点数が二倍近く分かれているという事実は、 その平均値からきれいに消えていました。 平均が隠していた二つの世界、この編の出発点です。
01 · The Surprise
平均が嘘をつく場所
平均3.5点には二つの意味があり得ます。みんなが3.5点で一致している組織か、 役員4.5・作業者2.5の二つの世界に分裂した組織か。報告書に平均値だけが 刻まれれば、二つは同じ会社に見えます。安全担当者にとっては、後者の方が はるかに危険なシグナルです。同じ危険を役員と作業者が違う色で見るなら、 事故はその色の差から起こります。
平均だけ見れば、二つの会社が同じ会社に見えます。けれど事故は平均ではなく、 分布のどこか一点で起こります。
組織文化の診断が安全担当者にとって本当に仕事をするためには、 この差が見えなければ なりません。だから私たちが一番長く抱えていた 決定は、同じ回答を どう分けて 見るか、でした。
02 · Two Axes
誰が答えたか、誰についての評価か
最初の一行の問い、「私たちの会社は、ミスをしても安心して言える」は 同じ一行でしたが、誰が答えたかによって、実際には違う対象についての 評価になります。役員が答えれば自分自身 (=経営陣) が作った雰囲気への 評価であり、作業者が答えれば自分の上にいるリーダーの雰囲気への評価です。 同じ文章でも、落ちる場所が違うわけです。
普通のアンケート調査は回答を一つの桶で受け取ります。誰が答えたかは 役職ラベルだけで、誰についての評価か はそもそも問いません。 Culture Ladder は同じ回答を 二つのメタデータ で一緒に刻みました。
- SUBJECT、誰がつけたか。 回答者自身の分類 (役職・部署)。役員か、リーダーか、作業者か。
- EVALUATOR、誰についての評価か。 経営陣・リーダー・同僚・自分自身など、評価の対象。
二つの軸が一緒に入っていれば、同じ会社の中で 二つの風景 が分かれます。
同じ場所を二人が見たとき。 「私たちの会社は、ミスをしても安心して言える」という同じ一行の問いを 前に、役員は4.3点、作業者は2.1点をつけました。二倍の差。平均3.2が 隠していた二つの世界の正体です。同じ会社なのに役員と作業者が 違う会社を見ているということで、事故はそのずれた場所から最初に 起こります。
一人が二つの場所を見たとき。 一人の作業者が同じ問いに二度答えます。「経営陣はリスク報告を真剣に 聞く」には2.1点、「同僚たちはリスク報告を真剣に聞く」には4.0点。 上へは情報が詰まっているが、横へは通じているという意味。リスクが 同僚同士の間でだけ回り、上へ上がらない会社。安全担当者が最初に 手を入れなければならない場所です。
03 · Behaviour + Precondition
行動に段、その横に条件
座標だけでは では何段か という答えが出ません。SCL の五段の はしごが点数の中で本当に段として動くためには、すべての行動項目が どの段の行動か が設計時点であらかじめ決められていなければ なりませんでした。
「危険を発見したら上長に報告する」が1段の行動か4段の行動かは、 設問設計のときに決めておかなければなりません。
そこで分類体系を5段に組みました。
- Theme、五つの大主題。 リーダーシップ、情報の流れ、学習、ルールと基準、参加と責任のような 大きなカテゴリです。産業とアンケート調査によって五つの名前は 変わりますが、五つに切る という約束だけは、アンケート調査の 間に破りません。
- SubTheme、Theme の下の細部領域。 Theme 一つだけでは測定単位として広すぎるので、もう一度分けると 測定可能な行動を吊るす場所が生まれます。例えば「情報の流れ」の 下には「リスク報告」のような SubTheme が吊るされます。
- Behavior、測定可能な行動の単位。 SubTheme の下に吊るされる分類の最も小さな単位です。すべての Behavior には step_value (1〜5) が刻まれていて、 「事故を絶対に報告しない」は step 1、「危険を発見したら上長に 報告する」は step 3、「事故報告者が公開的に認められる」は step 5 の行動。回答がその段の基準線を通れば、会社がその行動を その段で満たしたとみなします。
- Precondition、その行動を可能にする環境条件。 Behavior の横に別に吊るされていて、行動がうまく起こらないときに 人を急かす前に環境をまず問うようにします。報告が詰まっているなら 報告する人を急かす前に、報告が損として返ってこない という 前提が会社の中にあるかから見るべきです。
- Question、回答者が実際に受け取る一行。 Behavior と Precondition がそれぞれ Question として導出されて 一度のアンケート用紙を成します。このとき Behavior の step_value が Question にそのままついてきて、どの段の 行動を問う質問なのかが最初から刻まれています。回答者には一行の 質問だけが見えますが、その一行の出所 (Behavior · Precondition) と 段 (step) はすべての回答に一緒に刻まれて、分析画面で再び分類に 戻ります。
アンケートで行動関連の項目に否定的な回答が積み重なると、その行動に 吊るされた Precondition たちが結果画面で自動的に広がります。 この一マスが 改善提案の出発点 になります。結果を閉じて PDF フォルダに送る最後の動作の代わりに、結果画面がそのまま 次のアンケート調査の設計室 へとつながる橋。測定が変化へと 移っていく場所の始まりで、最後の編の主題でもあります。
アンケート調査ごとに target_step を別に決めます。最初の アンケート調査は STEP 3、次は STEP 4。同じアンケート用紙の上で 飛躍目標だけが一段ずつ上がります。はしごを一度に全部登らなくても いいという事実が、結果画面ではなく データ構造 に刻まれて いるわけです。
今回のアンケート調査の点数は結果ではなく、次のアンケート調査の材料です。
04 · Core Design
Culture Ladder の核心設計
ここまでが OpenKnock Culture Ladder の核心設計です。二つの軸 (誰が答えたか × 誰についての評価か) と五段の分類 (Theme → SubTheme → Behavior / Precondition → Question)。二つが合わされば 会社を一つの場所で読める 一枚の地図 になります。一つの会社の 5,000人が回答を送れば、5,000個の点がこの地図の上に落ちます。
どの点がどこに集まり、どこが空いていて、どの二点の間の距離が 二倍に分かれているか。その風景を一つの場所で読めるのが一枚の 地図です。平均一行で閉じられていた報告書が、会議室の合意を 違う形に変え始める場所。
地図がそのまま測定です。その上に落ちる数字は結果に過ぎません。
ですが一枚の写真だけでは会社がどこにいるかを知るには足りません。 一枚の写真は一瞬の風景でしかないからです。同じ地図の上に写真が 何枚も積み重なれば一つの会社の時間軸となり、産業の違う会社たちが 同じ地図の上で出会えば分布の上の位置になります。地図が本当に 仕事をし始める場所が、次の編です。
著者

ジョン・ユンファン
Founder
schemalismを運営しています。エンジニアの視点から事業を展開し、自ら仮説を検証して次のより大きな段階へと実現していく仕事を楽しみます。コードとビジネスが交わる場所で、毎回次の一手をつかみ取ります。
この記事が属するシリーズ
組織文化、本当に測れるのか?
OpenKnock Culture Ladder は安全文化を診断するためのアンケート調査プログラムです。基準は私たちが作っていません。オランダ安全文化認証規格 NEN SCL の5段階のはしごをそのまま借りて、会社が5つのマスのどこにあるのかを、毎回のラウンドで同じ基準で測り直します。schemalism · RIMS · LRQA が共に作り、現代モービス · クムホ石油化学 · ポスコインターナショナルが約15,000名の回答で同じ基準の上に自社の位置を刻みました。測定と変化の間で見たものを6編にまとめました。
全編
06